改正労働施策総合推進法が2019年5月29日に成立し、
企業に対してハラスメント対策の強化が義務付けられました。
これまで、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法などで
定められていたセクシュアルハラスメント、
マタニティハラスメントの対策強化に加え、年々相談件数が
増加しているパワーハラスメントへの対策も求められます。
消費者庁のガイドラインでは、相談窓口の設置と
相談者・行為者のプライバシー保護に関して、
以下のような指針を出しています。
通報者の匿名性を確保するとともに、経営上のリスクに係る情報を把握する機会を拡充するため、可能な限り事業者の外部(例えば、法律事務所や民間の専門機関等)に通報窓口を整備することが適当である。
実際の外部相談窓口を利用する通報者からは、社内の相談窓口では通報がもみ消されたり、うやむやにされたりする可能性を排除するために、外部窓口へ相談したという声を多く聞きます。また、行為者が社内の調査担当者と元同僚だったなど、社内の異動歴を振り返り、通報後の会社の対応に不安を感じて外部窓口を利用している場合もあります。
個人情報保護の徹底を図るとともに通報対応の実効性を確保するため、匿名の通報も受け付けることが必要である。その際、匿名の通報であっても、通報者と通報窓口担当者が双方向で情報伝達を行い得る仕組みを導入することが望ましい。
外部窓口を利用した通報者のうち、8割は匿名を希望します。所属部署などの情報についても、個人が特定される可能性がある場合は、会社へは非開示にしたいという希望がある場合もあります。外部窓口の相談員にはたくさんの情報を開示していただけますが、個人の特定を避けるため、会社への報告内容は限定したいという通報者も多くいらっしゃいます。
パワハラは被害者の心身に影響を及ぼすだけではなく、
生産性の低下、人材の流出など、
会社へも
悪影響を及ぼします。
また、ハラスメントの
行為者だけではなく、
会社に対しても
法的責任が問われる事態を招きかねません。
就業規則その他服務規律等を定めた文書で、パワハラ行為を行っていた者については、懲戒規定等に基づき厳正に対処する旨を定めます。より詳細な規定を定めたい場合は、就業規則に委任の根拠規定を設けて、パワハラ防止規定を定めることも有効です。
従業員が相談しやすい相談窓口を設置し、できるだけ初期の段階で気軽に相談できるしくみをつくることが有効です。
匿名性を守り、従業員が気軽に相談できる環境を提供する方法の一つとして、社外相談窓口(第三者機関)の活用も有効です。
職場のパワーハラスメント防止対策を効果的に進められるように、早い段階でアンケート調査を実施し、職場の実態を把握することが有効です。アンケート調査は、パワーハラスメントの有無や従業員の意識の把握に加え、パワーハラスメントについて職場で話題にしたり、働きやすい職場環境づくりについて考える貴重な機会にもなります。
パワーハラスメントの防止に向け、方針やルールなどとともに、相談窓口や取り組みについて周知することが必要です。この周知は、電子メールやポスターなどで伝えるだけではなく、会社が本気で取り組んでいることや、その取り組み内容を理解してもらえるものでなければなりません。パワーハラスメントの防止のためには、より積極的、能動的な周知が必要であり、有効です。
何が業務の適正な範囲を超えているかについては、業種や企業文化の影響を受けるため、
各企業、職場で認識をそろえ、その範囲を明確にすることが大事です。
暴行・傷害
脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
隔離・仲間外し・無視
業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
業務上の合理性はなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないこと
私的なことに過度に立ち入ること
注意 1~6については、パワハラにあたりうる事柄すべてを網羅したものではありません。
パワハラの定義は、同じ職場で働く者に対して、
1.職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、
2.業務の適正な範囲を超えて
3.精神的・肉体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為 とされています。
(平成24年「職場のいじめ・いやがらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ報告」)
実際の相談現場に寄せられる声の代表的なものをご紹介します。社内では相談できない、
相談したけど対応をしてもらえなかったという声も多く、中立な立場である第三者機関へ助けを求めるケースが少なくありません。