「AIね、はいはい、AI…」良くわからないままブームを迎えたあなたへ!

私も初めはそう感じていました。自身の業務に置き換えて考えてみないと想像が難しいところもあるでしょう。皆さんは『AI』と聞くと、近未来のSFチックな様相を思い浮かべますか?それとも身近な生活に溶け込んだ様子を思い浮かべますか?まだまだ先の未来、朝起きたら体をスキャンされて、体調に合った朝食が用意される近未来の自動マシーン…今話題の呼びかけるだけで家の電化製品をコントロールできるデジタル端末。どちらを想像しても決して間違いではありません。なぜなら、【AI】は皆さんが思うよりずっと昔から存在し、時代によって変化を遂げてきたからです。ひと家族のなかでも、祖父が享受してきた【AI】と孫が享受している【AI】とでは、そのものが大きく変わります。
AI(人工知能)はそのもの単体では機能しないことはご存知でしょうか。AIは自らを取り巻く環境を学習し育ってきました。1950年代頃からAIは徐々にその存在感を示し、研究も活発に行われ始めます。私たちの生活に根差したかたちで発達を遂げているので最初は【データ検索】を自動で実現するための機能として始まり、現在では大量のビックデータを使って知識を得る【機械学習】の領域まで発展を遂げました。
ですので、同じ【AI】という言葉でも、世代によって大きく認識が変わるのです。また、ディープラーニングを行うことで、さながら人間が作業をするように思考し、判断を行っている現在のAIと検索しかできなかった時代のAIは、まったく違うようで同じ直線の上にいます。
ですので、誰かが話す【AI】も自身が想像する【AI】もまったく違うように見えて、実は同じものを指していたりするのです。AIは私たちの生活とともに発達し、その生活を支えるべく今も学習を続けています。
自動化する企業の未来

AIは様々な産業に活用されます。人工知能を以て、人間が行っている業務の自動化を行います。または、これまで定量的な判断、検証が出来なかった【勘】の部分をデータとして収集することで予測ができます。【勘のデータを収集】というと幾分難しく聞こえますが、つまりはじゃんけんで勝った確率、パターンをデータとして積み上げ、勝ちパターンを予測・実行、検証することで、その予測があっていた『パターン』をデータとして蓄積することが来ます。これにより、AIは『もっとも効率的なやり方』を定量的なデータで学ぶことが出来ます。これを繰り返し行い、人間が自然に行っている大量の【パターン】をAIが学習することで、精度の高い自動化が実現します。
ニーズの高度化がAIを発展させる!?
「AIが騒がれだしたのは最近じゃない?」そう感じている人もいれば「そんなことはない!AIはずっとあっただろう!」そう声を上げる人もいます。正反対の二つの意見ですが、この二つの意見はどちらも間違いではありません。確かにAIが騒がれだしたのはごく最近ですが、それよりもずっと前からAIの技術は存在していました。ここにきて、ずっと存在していたAIがなぜまた人気になったのか…。
実はAIが活発化した時期をグラフにすると、大きく波打つようなグラフになります。活発期と沈静期とが交互に訪れるのが特徴です。なぜこのような動きになるかというと、AIの活性化・発展の先にはいつも明確な壁が現れ、そこで一旦AIの発展がストップしてしまうからです。冒頭に述べたとおり、AIはAIだけでは学習し、発展することができません。AIを発展させるためには、AIを取り巻く周囲のITレベルも大きく進歩することが条件となるのです。
Netflixの辿ってきたデータマーケティングの世界

例えば、皆さんは【Netflix(ネットフリックス)】で動画を見たことがありますか?Netflixは定額制の動画の配信サービスですが、その配信コンテンツのサムネイル画像は、Netflix内に大量に蓄積、分析された顧客情報や視聴データをアルゴリズムによって厳選されたものです。厳選には【AVA】というネットフリックス社が独自に開発したシステムが用いられます。ですので、AVAの活用によって、ドラマAのサムネイル画像でもユーザーによってはまったくちがうサムネイルが表示されていることもしばしばあります。
それでは、Netflixがサムネイルをユーザー単位でターゲティングしてまで獲たいのはなんなのかといえば…それは一重に「ユーザー視聴率」なのです。本来であれば「月額利用料を払っている顧客が動画を全く見ない」という状況なら、それはそれでコストパフォーマンスは良いのですが、Netflixが懸念しているのは、定量的なデータとして得られているその先の解約率です。視聴率がある一定の水準まで低下すると解約率が上がることがわかっているので、1ユーザーの視聴率を維持しなければなりません。そのために、ユーザーの目に留まるコンテンツを工夫して表示し続けることが重要なのです。
Netflixの事例のように、ビッグデータは最早企業のマーケティングの中枢を担っています。そのデータを円滑に活用するためにアルゴリズムやAIのニーズが必須となっているのです。データやそれを基礎とするサービスが活発な時代=AIが活発化している時代ともいえるでしょう。
人間だけの、オリジナル

これまで述べたようにこれまでも、これからも人間のビジネスをサポートする大変便利なAIですが、その便利な側面、雇用の危機を生んでいます。
『AIに人間の雇用が奪われてしまう…!?』
現在メディアはこぞってこの話題を取り上げています。これまでも雇用の問題は何度も何度も浮上していましたが、AIと名がついただけで、とてもキャッチーに扱われることが多く、問題の根幹を見ることが難しくなっています。
我々のようなサービスを扱う業種は、なにもAIや雇用に係わる問題ばかりでなく、この「オートメイション」と「ヒューマニティー」の問題を常に抱えています。アウトソーサーには「顧客のビジネスを効率化させる」という目的と対極の軸に「効率化ばかりのサービスに血を通わせる」という目的も掲げています。企業が業務を効率化するために捨てていた「顧客満足度」の部分を引き受けたり、逆に顧客満足度を優先するばかりに捨ててしまった「効率化」を実現したりと、まさにオートメイションとヒューマニティー両方の提供を行っているわけです。
AIのサービス提供を受けるのがAIなのであれば、そこに定性的な「気遣い」や「思いやり」がなくとも、サービスは円滑に提供され、円滑に享受されます。ただし、我々の生きるこの時代では、まだまだAIのサービス提供を受けるのは人間です。予想外の思いやりに胸を撃たれたり、感動したり、人間はそこにサービスの意義を見出しますので、サービスの享受対象が人間である限り、このヒューマニティーはサービスの一部として組み込まれます。本当に人間の仕事が奪われるとすれば、ディープラーニングによって「人間の感情の機微」が定量化されはじめるそのときです。
それまではAIの発展・冬の時代をもうしばらく一緒に廻ることとしましょう。
出典
- 総務省(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc142000.html)
- 第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~
- 第2節 人工知能(AI)の現状と未来
- 第3節 人工知能(AI)の進化が雇用等に与える影響
- Netflix:AVA: The Art and Science of Image Discovery at Netflix(英文)
- (https://medium.com/netflix-techblog/ava-the-art-and-science-of-image-discovery-at-netflix-a442f163af6)